認知行動療法(CBT)第6回

認知行動療法(CBT)第6回

第6回:信念

これまでは主に認知行動療法の基本モデルや認知再構成法を中心にワークに取り組んでいただきました。その狙いのひとつに「自分の反応(認知、感情、行動、身体反応)を客観的にキャッチする力を養う」ということがありました。

今後も引き続き自分の反応をキャッチする練習を続けていただきたいのですが、今回からはこれまでの認知再構成法とは別の技法やワークに取り組んでいただき、自分に対しての気づきと対処法を身に付けていただければと思います。

自分を大切にできない信念に気づく

今回は自分を大切にできない「信念」に焦点を当てていきたいと思います。

「信念」という言葉は日常的にも良く使う言葉ですが、認知行動療法でも専門用語として扱われるひとつの概念となります。具体的には「自動思考の背景にある価値観」を「信念」と言います。自動思考は、刺激に対して自分の意思とは関係なく自動的に湧き出てくる思考です。その自動思考が生起するきっかけとなる価値観が信念にあたります。

信念はその人の人生の価値観により形成されており、これまでの経験で培ってきた自動思考より深層にあるもので気づきにくい特徴があります。活動の原動力になる事もあれば、臨機応変さや柔軟さを損なわせる原因にもなり得ることもあり、時として自分を大切にできていなことがあります。

様々な場面で似た考えが出るときがないか?

その人が困難さを抱えるときには、共通した考え方が出てきており、その根底には自分を大切にできていない特定の信念が影響していることがあります。

例えば、次の2つのエピソードがあったとします。

    ① 出来事 :大事なプレゼンで緊張してしまい、途中で言葉に詰まってしまった。
    自動思考:言葉に詰まるなんて、全てが台無しだ。この仕事は上手くいかない。

    ② 出来事 :家族から「最近忙しそうだから、お皿洗いくらいはやっておくよ」と言われた。
    自動思考:自分がグズグズしていたからだ。家事すらできない自分に家族は呆れている。

この出来事に対して、思考のクセとしては「全か無か思考」や「べき思考」などが絡んでいそうですが、その根底には「すべてを完璧にこなさなくてはいけない」といった信念が隠れていると考えることができそうです。

信念は心の深層にあるので検討しようとしてもなかなか認識しづらく手が届きにくいという特徴があります。ですので、まずは日常的なストレス場面で生じる比較的浅い自動思考から検討していくと良いです。その作業を続ける中で自分の信念に気づいて行きましょう。また、出来事を扱うと同時に信念に関するチェックリストを活用することも有効です。自分にはどんな信念があるのか、調べてみましょう。

なお、注意事項として信念自体は良い悪いという評価で見るものではありません。先ほどもお伝えした通り、活動の原動力にもなり得るものです。体調が悪いときにその信念が強くなることもあり、その場その場で変化していくものでもあるということも踏まえた上で、チェックリストに取り組んでみてください。

【ワーク1】信念の気づき表をチェックしてみましょう。

やり方:それぞれの項目について、たいていの場合どう感じるか印をつけてください。そして、小計を算出してみましょう。
 回答例:〇1~5の小計:10点  〇6~10の小計:14点 …

自分の人生の価値観について考える

ワーク1で扱ったチェック表は各カテゴリーに分けられており、それぞれが自分の人生の価値観の(信念)の内容を表しています。その信念が高すぎると時として自分を大切にすることが難しくなってしまいます。その傾向と対策を記載しますので確認してみましょう。

各カテゴリー解説

    ①承認依存度(質問1~5)
    〇自己評価をどの程度、他人の反応で測っているか

    【高い場合】
    ・自分は人にどう思われているかに敏感。
    ・人の意見で用意に行動を変えてしまいやすい。
    ・他人の批判や怒りをかったときに不安になり抑うつ的になりやすい。

    【対策】
    ・自分自身の価値観をしっかり保てるようになっていきましょう。
    →他者からの批判や不賛成に晒されても落ち着いていられるようになっていきます。

    ②愛情依存度(質問6~10)
    〇自分の価値を、人に愛されているかどうかに左右される傾向があるか

    【高い場合】
    ・愛情がなくては生きていけないし、幸福にもなれないと感じる。
    ・劣等感に陥りやすく、人を遠ざけてしまうのではないかと恐れるあまり、自分の意思を抑えてしまう。その結果、人から尊敬されなくなってしまう。
    ・愛情を獲得しようと必死に打ち込むため、心を消耗させてしまう。

    【対策】
    ・満足感や充実感を味わえるような興味の対象を幅広く持つようにしましょう。
    ③業績依存度(質問11~15)
    〇自分の価値に対する感覚や楽しむ能力が、自身の生産性に依存する

    【高い場合】
    ・望ましい結果が残せないと、自分は価値がないと感じてしまう。
    ・仕事でスランプに陥ったり、退職したり、病気になるか動けなくなるかしたら、情緒的に破滅する危険がある。

    【対策】
    ・物事の過程や経験を楽しむようにしてみましょう。
    ④完璧主義度(質問16~20)
    〇物事を完璧にできないと満足できない

    【高い場合】
    ・色々なことが完璧に行えないと気が済まない。
    ・否定的な感情さえ悪いものとみなす。
    ・ゴールに到達できても、すぐにまたもっと遠くにゴールを置き換えてしまうので、決して満足が得られない。

    【対策】
    ・物事に取り組む過程や経過から多くの満足を得ることができることを知りましょう。
    ・現実に沿った期待を持てるようにしていきましょう。
    ⑤全能感(質問21~25)
    〇自分の周りで起こっていることの大部分に他人の責任を感じる

    【高い場合】
    ・何かストレスを感じた時に、自分のコントロール外にある他人の良くない態度や行動のせいにしてしまう。結果的に、罪の意識に脅かされ、自責の念にかられる。

    【対策】
    ・他人の責任と自分の責任を分けて捉えてみましょう。
    ・周りを全てコントロールできるわけではないことを知りましょう。
    ・相互的な人付き合いにより人生の楽しみがもたらされることに気づきましょう。
    ⑥自己非難度(質問26~30)
    〇問題があった際に責任の所在が自分にあると捉え、自分自身を非難してしまう

    【高い場合】
    ・自責により、精神的に辛く感じやすい。

    【対策】
    ・客観的な視点を育て、問題の整理を適切に行えるようにしていきましょう。自分を必要以上に責めなくなっていきます。

    ⑦絶望感(質問31~35)
    〇絶望感を感じやすいかどうか

    【高い場合】
    ・落ち込みや意欲低下が起こりやすい。

    【対策】
    ・楽しみなことを考えてみましょう。また自分の強み・できることに目を向けてみましょう。

【ワーク2】ワーク1の各カテゴリーの解説を読み、自分の傾向を書き出してみましょう。そのうえで、どのような対策が有効か考えてみましょう。

【ホームワーク】

次のCBTまでに下記のワークに取り組んでください。
・エピソードを最低1つ取り上げ、3コラムでまとめてください。
・その際、どのような信念が根底にあったか検討してください。
・検討した信念に対してどのような対策が良いか検討し実践してみてください。
・そのうえでの気付きをまとめてください。

ワーク1~2を実施しましょう

ワークを実施し、内容を報告メールで送ってください。Wordファイル等をメールに添付しても結構ですし、メールに直接書いて送っても構いません。

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