認知行動療法(CBT)第4回

認知行動療法(CBT)第4回

第4回:根拠と反証

これまでの回で、私たちの感情・行動・身体反応に影響を与える自動思考(勝手にわき起こる考え・こころのセリフ)について学び、前回は自動思考記録表(コラム表)を用いて思考の幅を広げていく認知再構成法(3カラム法)についてご紹介しました。

本日は前回の3カラム法を発展させた5コラム法と、その中で用いられる根拠と反証についてお話をします。

前回のホームワーク確認

①3コラムを用いて、不快な気持ちになった時の出来事を2エピソード整理してみましょう。
②整理したエピソードの自動思考にはどのようなこころのクセが隠れていましたか。代表的なこころのクセにぴったりあてはまらない場合もどのようなこころのクセがあったか整理してみましょう。
・上記の内容を、本日のワークと一緒に提出してください。

根拠と反証

それでは根拠と反証についてみていきましょう。この2つの項目では、以下の内容をまとめていきます。

根拠と反証をまとめる際のポイントは、根拠については「根拠」だから(so)「自動思考」と文章で整理できるものが根拠となりえます。

例えば「根拠:車内アナウンスでも荷物がぶつからないよう注意喚起している」から(so)、「自動思考:電車に乗るときは荷物を前に抱えるか、ぶつからないようにするものだ。」という具合に整理できます。

また、反証については「自動思考」しかし(but)「反証」と文章で整理できるものが反証となりえます。

「自動思考:電車に乗るときは荷物を前に抱えるか、ぶつからないようにするもの」だが(but)、「反証:その人が荷物がぶつからないよう工夫できる状態とは限らないし、ぶつかっていることに気づいているかどうかは、私にはわからない」という具合に整理できます。

根拠と反証を検討することで、こころのクセがでやすい自動思考をより客観的に、より多角的に見直すことができます。
どのようにバランスのよい思考にするかについては次回の「適応思考」で扱います。今回は根拠と反証についてワークを通して理解を深めていきましょう。

【ワーク1】各自動思考に対して、根拠となりうるものは①~③のどれでしょうか。

(例題)
 自動思考「電車に乗るときは荷物を前に抱えるか、ぶつからないようにするものだろ!」
 根拠①:人に迷惑をかけないのが常識だ。
 根拠②:車内アナウンスでも荷物がぶつからないよう注意喚起している。
 根拠③:周りの人も迷惑しているはず。

 答え.根拠② (①.③はいずれも自分の思考である。)

問題1
自動思考「バナナは健康にいい。」
根拠①:客観的な研究結果が出ている。
根拠②:バナナを食べ始めてから調子が良い気がする。
根拠③:友達が健康に良いと勧めてきた。

問題2
自動思考「A部長はいつも私に対してあたりが強い。」
根拠①:去年の人事考課で評価されなかった。
根拠②:私のことを嫌っている。
根拠③:意見を述べると強い口調で反応する。

問題3
自動思考「Bさんは自分のことを馬鹿にしている。」
根拠①:自分が発言した時に反応を示さなかった。
根拠②:自分が発言した時に無視をしていた。
根拠③:自分が発言した時に目を合わせようとしなかった。

【ワーク2】各自動思考に対して、反証を自分なりに考えてみましょう。(具体的な状況の記載は省きますので、自動思考に対する矛盾するであろう反証を考えてみてください。)

(例題)
  自動思考「電車に乗るときは荷物を前に抱えるか、ぶつからないようにするものだろ!」
  反証:その人が荷物がぶつからないよう工夫できる状態とは限らないし、ぶつかっていることに気づいているかどうかは、私にはわからない。

問題1
自動思考「バナナは健康にいい。」

問題2
自動思考「A部長はいつも私に対してあたりが強い。」

問題3
自動思考「Bさんは自分のことを馬鹿にしている。」

【ワーク3】5コラムを用いて、エピソードを2つ整理してみましょう。

下記の例を参考に自分のエピソードをふり返り、5コラムで整理しましょう。

(例)
状況:不快な感情を伴う出来事
・帰りの電車で、吊革につかまり乗車していると、後ろから二人組のうちの一人のカバンが何度も背中にぶつかってくる。

感情:不安、悲しみ、落胆、怒りなど(強さ0~100%)
・イライラ70%、呆れ50%、諦め40%

自動思考:その時に頭に浮かんだ考え(こころのセリフ)(確信度0~100%)
・「電車に乗るときは荷物を前に抱えるか、ぶつからないようにするものだろ。」と思った。(確信度80%)

根拠:どうしてそう考えたのか。
・車内アナウンスでも荷物がぶつからないよう注意喚起している。

反証:自分の考えと逆の事実や例外となる事実はないか。
・その人が荷物がぶつからないよう工夫できる状態とは限らないし、ぶつかっていることに気づいているかは定かではない。

ワーク1~3を実施しましょう

ワークを実施し、内容を報告メールで送ってください。Wordファイル等をメールに添付しても結構ですし、メールに直接書いて送っても構いません。

ワーク1,2の解答例はこちらワーク解答例

ホームワークを実施しましょう

※こちらのワークは次回提出してください。

①5コラム法を用いて、エピソードを最低1つ整理してみましょう。
②整理した自動思考にはどのようなこころのクセが隠れていたか検討してみましょう。
代表的なこころのクセにぴったりあてはまらない場合もどのようなこころのクセがあったか整理してみましょう。

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