認知行動療法(CBT)第2回

認知行動療法(CBT)第2回

第2回:自分を客観視する

前回は、認知行動療法は自分のストレスの成り立ちを理解したうえで、不適切なパターンを変容(選択肢の幅を広げる)し、その解決を目指していく心理療法であることをお話しました。

そのためには、自分のなかで起こっている4種類の反応「認知、感情、身体反応、行動」を整理し、様々な刺激に対する反応の仕方を理解することが大切です。

また、その時の状況に対して自分の意志とは関係なく自動的に湧き出てきた考え「自動思考(こころのセリフ)」が、各反応に影響を与えているということをお伝えしました。

第2回:自分を客観視する

今回のテーマは「自分自身を客観視する」です。

ひとつひとつの出来事(刺激)に対して人は多様な反応を示しますが、自分の反応のパターンを整理していくためには、自分の反応を客観的に捉える力を養っていくことが大切になります。

ひとつ上の視点から自分自身の認知や行動を客観的に見る作業を「メタ認知」といいます。

実際に活動している自分を俯瞰し、どのように考えたり行動したらよいかを検討します。このメタ認知により、
1:気づきを得る
2:思い込みや思考のクセから脱する
3:気づきをもとに創造的な発想を持つ
といったことが可能になると言われています。

    💡メタ認知のポイント
    人によって自分自身を客観視することが得意だったり不得意だったりしますが、メタ認知を鍛えるためにはメタ認知に繋がる問いかけやフレーズを頭の中で繰り返すと良いです。

    1:「○○と、自分は思っている。」  
    言語化することで、自分の頭の中にある考えを客観的に捉えやすくなります。

    2:「○○さんから見たら?」  
    別の視点で考え、ものごとの捉え方の幅を広げることで、ひとつの考えから抜け出すきっかけを得やすくなります。

    3:「何のためのそうした/したいのか…?」  
    当初の目的を振り返ることで自分の考えや行動を見直すきっかけを得やすくなります。
【ワーク1】以下の写真を見て、頭の中に浮かんだ自分の考えを5つ以上言語化してみましょう。自動思考を捉える練習になるので、写真に関すること以外の思考が浮かんできた場合もそのまま言語化してみましょう。

問題1

問題2

問題3

【ワーク2】視点を変えて、ものごとの捉え方の幅を広げてみましょう。以下の状況を読み、各登場人物が何を考えるか、他者の視点に立ったつもりで考えてみましょう。また、それらの考えをもとに、Aさんはどのような行動をとればよいかも考えてみましょう。

状況:Aさんはコンビニにおにぎりを買いに来ました。しかし、おにぎりの棚の前で、おにぎりの具をツナマヨか鮭かでしばらくの間悩んでいます。コンビニにはアルバイトの店員Bさん、Aさんが買い物を終えるのを外で待っている友人のCさんがいます。

問題1:コンビニ店員のBさんからAさんを見たらどう思うでしょうか。
問題2:外で買い物を終えるのを待っている友人CさんからAさんを見たらどう思うでしょうか。
問題3:Bさん、Cさんの考えを想像したうえで、Aさんはどのような行動をとればよいでしょうか。

自分の反応と事実を切り分ける

出来事を整理する際に、実際に起こっている事実と、自分の中で生起している考えや感情が混同してしまうことがよくあります。

出来事を客観的に捉え、自分の反応及び、適切なパターンを検討していくためには、まず実際に起こっている事実と自分の中で生起している考えや感情をしっかりと切り分けて認識することが大切になります。

例えば、「Aさんが声をあげて怒っており、怖い気持ちになった。」とした場合、何が事実となり、何が自分の中で生起した考えや感情になるでしょうか?

この場合、Aさんが「声を出していた」という部分のみが事実となり、「怒っていた」というのはその様子を見て認識した自分の認知となります。そしてその認知の影響から生起した感情が「怖い=恐怖」に分類できると考えることが出来ます。

良くありがちなのは、「怒っていた」と自分が認知したにもかかわらず、それを事実として受け取ってしまったり、自分は関係ないにもかかわらず「何か悪いことをしてしまったのではないか。」と考え過ぎてしまうことです。しかし、このように結論づけてしまうのは時期尚早です。すれ違いを防ぐためにはしっかりとコミュニケーションをとりお互いの考えを確認していくことが大切になります。

【ワーク3】エピソードを読み取り、事実・認知(思考)・感情を整理してみましょう。

※文面から読み取れる部分で整理してください。
 読み取れるものが二つ以上のがある場合は箇条書きで整理してください。

例題:男性が声を出して怒っており、怖い気持ちになった。
事実:男性が声を出していた。
認知:男性が怒っていると思った。
感情:恐怖

問題1:朝会社に出勤したときに職場の同僚Aさんにあいさつをしたら、「おはようございます。今日もよろしくお願いします。」と返事をしてもらった。Aさんは良い人だなと思い、嬉しい気分で仕事を始めることが出来た。

事実:
認知:
感情:

問題2:夕方の帰り道、向かいから男性が歩いてきて、すれ違いざまに「チッ」と舌打ちをされたと思い「なんですか!」と言い返したら、「いや、あなたこそなんですか!」と言い返された。「いちゃもん付けてきたのはあなただろう」と心のなかで思いイライラが強まった。

事実:
認知:
感情:

問題3:上司のBさんから仕事中に「これもよろしくね!」と仕事を頼まれた。「これは今日中までですか?」と確認すると「難しかったら相談してね。」と言われた。それって一人でやれってことかなと思い、だれにも相談できないと感じ一人で仕事をこなしていった。その後、体調を崩してしまい、その旨をBさんに伝えると「だから相談してって言ったじゃん。」と言われ、ひとりに任せたのはそっちだろうと思いBさんを信じられなくなった。

事実:
認知:
感情:

【ワーク】上記のワーク1~3に取りくみましょう。

課題の提出はWord、またはメールに直接記入でも可です。

解答例
問題1
事実:朝会社に出勤したときに職場の同僚Aさんにあいさつをした。
   「おはようございます。今日もよろしくお願いします。」と返事をしてもらった。
認知:Aさんは良い人だなと思った。
感情:嬉しい

問題2
事実:夕方の帰り道、向かいから男性が歩いてきた。
   「チッ」という音がした。
   「なんですか!」と伝えたら、「いや、あなたこそなんですか!」と言い返された。
認知:すれ違いざまに「チッ」と舌打ちをされたと思った。
   「いちゃもん付けてきたのはあなただろう」と思った。
感情:苛立ち。

問題3
事実:上司のBさんから仕事中に「これもよろしくね!」と仕事を頼まれた。
   「これは今日中までですか?」と確認すると「難しかったら相談してね。」と言われた。
   体調を崩した旨をBさんに伝えると「だから相談してって言ったじゃん。」と言われた。
認知:「それって一人でやれってことかな」と思った。
   だれにも相談できないと思った。
   ひとりに任せたのはそっちだろうと思った。
感情:不信感。

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