FOA2

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FOAとは

FOAとは、『フォーカシング指向アート療法(Focusing Oriented Art Therapy)』の要素を取り入れて、皆さんがご自分の体や気持ちの状態に気づきを得るために行うプログラムです。本来は、『療法(Therapy)』とつきますが、このプログラムでは自己理解や自己受容をメインとし、therapyの要素を大きく取り上げないことから、『FOA』と名付けています。

フォーカシング指向アート療法自体は、フォーカシング指向心理療法と芸術療法が融合されたものです。では、そもそも『フォーカシング指向』とは何なのでしょうか。

フォーカシング指向心理療法とは、自分の体や気持ちなど、自分の中にあり、感じられているものに焦点を当てていく心理療法です。例えば、私たちは体の感覚や気持ちとして、『感じてはいるけど、言葉で説明するのは難しい』『言葉では表現しきれない』という状況になることがあります。

例えば、「モヤモヤする」であったり、「なんとなく変な感じがする」などです。これらの、『モヤモヤ』や『変な感じ』というのは私たちが体や気持ちでは感じているけど、言語化することがまだできていないもの「フェルト・センス」というものです。

フォーカシング指向心理療法では、このフェルト・センスをじっくりと見つめる・振り返っていく作業を行い、『今、自分にはどんな感じがあるのか』ということを見ていきます。

『フォーカシング』自体は日頃、誰でも行っているものだと言われています。私たちの気分や体の感覚もその一例ですが、本来言語として表現するものが難しいものが多くあります。ただ、それを「何かに置き換えて」「何かにたとえて」行うと、すんなりと表現できることがあります。

『あなたを動物でたとえるとなんでしょうか?』

本来、私たちは動物ではないので、たとえることができないはずです。しかし、私たちは「自分を動物にするなら…」と問われたときに自分の見た目や性格など、ポイントになる部分をふり返って、「この動物とならマッチする!」と感じる・思ったものをお答えになられているのではないでしょうか。この心の中で行っている作業工程のことを『フォーカシング』と呼びます。

フォーカシング指向心理療法では、この『フォーカシング』という過程を使い、今の自分の状態に目を向ける、理解し、受け止めることをしていきます。主には心理面接での取り組みが多くありますが、他にも媒介を使ってフォーカシングしていくこともあります。

そして、その媒介の一つと言えるのが、今回のプログラムで行っている『アート(芸術)』です。

フォーカシング指向アート療法の考案者であるローリー・ラパポートは、「人は元来、自身の気持ちや状態を絵で描き残す能力を持っている」「それはエジプトの古代文字などからも言えること」と話しています。このプログラムでは皆さんのご自身の気持ちや体の状態に目を向け、絵で表現したり、工作をしたりすることを通し、自己理解を深めます。

実際のワークをやってみましょう

それでは、早速FOAのワークを実践してみましょう。まずは、実際に書き出す前のウォーミングアップです。

1.ウォーミングアップ

お手持ちのメモ帳などを使ってみましょう。今回はご自宅にあるものを使って頂ければ十分ですので、紙、ある方は色鉛筆やクレヨンをご利用ください。無い方はボールペンや鉛筆などで参加してみましょう。

紙に波線、ギザギザの線、ダッシュ、点、力強く太い線、優しく柔らかい線を描いてみましょう。大きさや角度、場所は自由です。そこまで描けたらあとは自由に描いていって構いません。皆さんの気持ちや感じが落ち着くまでいろいろなものを描いてみましょう。

2.今のフェルト・センスをつかんで描く

皆さんの今の体の感じや気持ちを描いてみましょう。リラックスした姿勢を取り、何度か深呼吸をしましょう。そして、今の自分の体や気持ちにどんな感じがあるかを見ていきましょう。自分のその体の感じや気持ちにしっくりとくる色、形、線などを当てはめて探っていきましょう。なんとなくしっくりくる表現が見つかったら、それを紙に描いてみましょう。

3.手のワーク

今日は皆さんの『手』にまつわることでワークを行ってみましょう。
私たちの手は何かを”つかみ”にいくものであり、何かを”受け取る”ものでもあります。
他にも何かを”握る”、“持つ”、“手渡す”など、様々なことができます。
このワークは皆さんが今、どんなものを大事にしたいのか、ということを知るチャンスとなるワークです。
A4サイズの用紙をお手元にご用意ください。コピー用紙等で問題ありません。

    3.手のワーク:手順

    ①自分の利き手と反対の手を紙の上に置き、自分の手をトレース(なぞり描き)します。クレヨンや細いマーカーがあればそちらがお勧めです。

    ②次に楽に腰かけた状態でゆっくりと深呼吸を繰り返します。体の中に深い呼吸を隅々まで届けるようなイメージを持ってやってみましょう。

    ③自分のこころの内に聴いてみましょう。頭で考える必要はありません。『私の人生や生活の中で大切なもの、私が大切にしているもの、持っているもの、人に手渡したいもの、受け取りたいものは何でしょうか。』プライベートなこと、仕事に関わること、なんでも構いません。自分が社会や世間(世界)、他者に手渡したいものかもしれません。あなたにとって大切なこと、意味があることなのかもしれません。

    ④1分ぐらい自分の中を見ていき、何か浮かんできていたら、それを感じてみましょう。それを感じると、喉の奥や胸、お腹など、からだに何かを感じるかもしれません。その感じを見ていくことで、色や形か言葉が浮かんでくるかもしれません。

    ⑤先ほど、ご自身が手をかたどった紙の上に今感じたものを描いていきましょう。手をデコレーションするような感じでもいいですし、指に文字を描きこんだり、一本一本の指に言葉が入る、手の中心に大きく描くなどもOKです。10分で描いてみましょう。

4.今日のワークの振り返りをしましょう

フォーカシング指向心理療法では、自身の感じや感覚の理解を深めるための様々な問いかけ・質問があります。今回は、ジャーナリング(ジャーナリングは『journal:記す、記録する』などを語源にしたワークです。)という手法を取り入れて、皆さんに作品と「対話」をしていただきます。

芸術作品はときに、私たちに何かを語りかけてきます。これは皆さんの作った作品でも同じです。私たちが耳を傾けることで、初めて何を言っているのかをわかることがあります。

もちろん、中には答えが出てこないものもあります。その場合には無理に答えを出す必要はありません。思い浮かぶものが出てくるまでゆっくりと待ち、出てきたらそれをメモなどに記入しておきましょう。

    ジャーナリング:手順

    準備1:ノートまたはメモ帳、ペンを用意してください。

    準備2:ワーク2(フェルトセンス)またはワーク3(手のワーク)のどちらかを選びましょう。特に自分が書いた絵の部分や色、線で気になるものがあれば、そちらを選んでください。

    ①まずは、アート作品との時間をゆっくり取っていきます。ご自分の作品をよく見てみてください。そして、「あなたは誰ですか?」と問いかけてください。

    ②しばらく待ってみて、作品の方から「私は~」という返事がくるのを待ってみましょう。

    ③ご自分の質問、そして作品から返ってきた答え、その2つをノートやメモに書き写していきます。

    ④書くときには、質問者(つまり皆さん)から始めましょう。そして、何か返事が聞こえてきたら、それを書いていきます。あまり考えすぎずにやっていくことがポイントです。考えたり、心配したり、評価・判断はせずに書いてみます。つい評価をしてしまいやすいのですが、アートに耳を傾けるようにしてみてください。

    ⑤「私は~」です、と作品から返ってきたら、今度はその答えの中で特に気になるところがあれば、そこに問いかけをしていきます。質問もご自身が聞きたいと思ったことを質問していって大丈夫です。

    ⑥やる上でのコツは、『作品になりきってみること』、そして、『自分も作品に興味をもって問いかけること』です。

    ⑦時間は10分~15分程度で取り組んでましょう。

例を記載しますので、参考にしてみてください。

【ワーク例】
選んだもの:フェルト・センスの描写のときに描いた水色の複数の線 (用紙内を斜めに少し入り乱れるように書かれている)
Q:あなたは誰ですか?
A:私は風の神です。
Q:私をどこに連れてってくれるのですか?
A:安心できる昔の日本へ
Q:そこには旅していけるのですか?
A:その四角いものは古い本。その中に地図があるからスーツケースを持っていけ!
Q:その本にはカギがかかっているみたいだけど…。
A:カギは自分自身で持っているから大丈夫。一歩踏み出してみて。

本日の課題の提出について

可能な方は描いたものをPDFや写真で送ってください。PCファイルのペイントを使って作成し、そのデータを送ってもらう形でも構いません。振り返りをした内容についてはワードファイルやメール文面にて送付してください。
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